ウインドーピリオドの間はHIV検査を受けても正確な判定は出来ません!
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あなたにHIV感染の不安があるとき、あなたにとって一番大事なこと、それは何でしょうか?
私が思うに、それは・・・
「HIV検査を受けると決心すること」
です!
こればっかりは、あなたが自分で決心しないことにはどうにもなりません。
そして、二番目に大事なこと、それは・・・
「ウインドーピリオド」
です!
なぜ二番目に大事かと言えば、ウインドーピリオドもあなたにしか分からないからです。あなたがHIV検査を受ける決心をし、いよいよ保健所や病院に行くと、必ずこのウインドーピリオドを確認されます。
ですから、予めあなたはウインドーピリオドが何であるか、どういう意味があるのかを知っておいて下さい。
◇ウインドーピリオドとはなに?
ウインドーピリオドを簡単に言えば、
「あなたがHIVに感染してから、HIV検査が可能になるまでの期間」
です。
そう、あなたが仮にHIVに感染しても、感染直後にはHIV検査を受けることが出来ません。正確に言えば、ウインドーピリオドの間はHIV検査を受けても正確な判定が出来ません。
「陰性」と言う判定が出ても、もしかしたら本当はHIVに感染しているかも知れないのです。
どうしてウインドーピリオドなる判定出来ない期間が存在するのかと言えば、それはHIV検査の原理に理由があるのです。
◇なぜ、ウインドーピリオドが存在するのか?
一般にHIV検査と言ってもその種類は色々とあります。それは、「何を」検査するかで方法が異なるからです。
例えば、あなたが保健所や病院に行ってHIV検査を受けると、普通は「抗体検査」を受けることになります。
「HIV抗体検査」とは、あなたがHIVに感染することによって生成された抗体を見つける検査方法です。直接ウイルスを見つける代わりに、抗体をみつけてHIVに感染しているかどうかを判定します。
あるいは、HIV抗体ではなく、HIVそのものを見つける検査もあります。HIVを構成する部品の1つ、p24と言うタンパク質を見つけるのが「抗原検査」です。
また、HIVのRNA遺伝子を見つける「NAT検査」と呼ばれる検査もあります。
このようにHIV検査では何を見つけるかで検査の種類が変わってきます。そして、どの検査方法にも存在するのがウインドーピリオドなのです。
◇抗体検査のウインドーピリオドは?
あなたがHIVに感染すると、30日くらい後にあなたの体内ではIgM抗体が作られます。その後しばらくしてから今度はIgG抗体が作られます。このIgMとIgGの2種類の抗体を見つけるのが抗体検査です。
ただ、HIVに感染してからどのくらいの期間に抗体が出来るかは、かなり個人差があります。早く出来る人は30日後だし、遅く出来る人は60日後かも知れません。
そこで、保健所や病院では余裕を持って90日後に検査を受けるよう推奨しています。従って、抗体検査のウインドーピリオドは90日とされています。
当然ですが、あなたがHIVに感染していても、抗体が出来る前に抗体検査を受ければ陰性判定が出ます。
つまり、ウインドーピリオドの間にHIV検査を受けて陰性になっても、それは本当にHIVに感染していないのか、感染しているけど抗体が出来ていないのか、その区別がつきません。
すなわち、HIVに感染しているのか、していないのか判定は出来ないのです。
管理人注記:2013年9月18日
現在ではHIV抗体検査の精度も高くなり、ウインドーピリオドは3ヶ月から2ヶ月に短縮されている検査所も増えています。
◇抗原検査のウインドーピリオドは?
HIVのウイルス粒子を構成するタンパク質の1種である、p24はHIV感染後、初期から検出が可能なマーカーです。
IgM抗体の生成よも早い時期に検査することが出来るため、抗原検査のウインドーピリオドは30日と設定されています。(検査機関によって30日から90日の幅があります)
図1.HIV感染のマーカー
このように抗原検査はHIV感染初期から検査が出来るメリットがあるのですが、弱点もあります。
それは、感染から1か月、2ヶ月と時間が経過するにつれ、だんだんとp24が減っていき、検査が出来なくなることです。
それは、HIV抗体が段々と出来てきて、HIVを攻撃し始めるため、体内のHIV量が減るからです。p24はHIVの部品の1つですから、体内のHIV量が減れば当然p24も減っていきます。
そのため、HIV検査においてはp24を見つける抗原検査だけを単独で行うことはなく、抗体を見つける検査と組み合わせて、抗原・抗体検査としています。
これならHIV感染初期であれば抗原が検出され、ある程度期間が過ぎていれば抗体が検出出来ます。
それともう1つ、抗原検査の弱点は、HIV-1しか検査出来ないことです。
あなたはご存知ないかも知れませんが、HIVにはHIV-1とHIV-2と言う2種類のウイルスが存在し、抗原検査では同時に2種類を検出することは出来ません。
ただ、日本においてはHIV-1の感染者が圧倒的に多く、今までのところHIV-2の感染者は数例しか見つかっていません。それで通常はHIV-1の抗原しか検出しないのです。
しかし、抗体検査においてはHIV-1、HIV-2、両方の検出をしています。この意味においても、抗原検査と抗体検査を組み合わせることが必要なのです。
◇NAT検査のウインドーピリオドは?
この検査はHIVのRNA遺伝子を見つける検査です。あなたがHIVに感染して、11日後からもう検査が可能とされています。
どうしてこんなに早期に検査が可能かと言えば、ほんのわずかなRNA遺伝子を、人工的に何万倍にも増幅して検査するからです。
HIV感染直後のまだ体内にHIVの量が少なくてRNA遺伝子を見つけにくい時期でも、増幅することによって精度よく感染判定が可能になります。
RNA遺伝子を増幅する検査なので、「核酸増幅検査」とも呼ばれています。
NAT検査はHIV感染初期から検査出来るし、判定精度も高いし、いいことずくめなのですが、実は弱点もあります。
まず、NAT検査を行うための設備、環境が高額であり、おいそれとどこでもやれると言う訳にはいきません。
私が調べたところ、厚生労働省の関連団体が運営する「HIV検査相談マップ」には全国でNAT検査を実施している医療機関として14の病院が紹介されています。たったの14です。
やはりお金がかかるんでしょうね、きっと。むろん高度な医療技術も必要なんだと思います。
なお、NAT検査は、血液センターで献血によって集まった血液の検査にも使われています。先の14の病院とは別に、血液センターには何か所か、NAT検査を行うところがあります。
また、NAT検査では抗原検査同様、HIV-1とHIV-2を同時に検査することは出来ません。普通はHIV感染のほとんどがHIV-1であるため、これだけを検査しています。
まぁ、あなたがNAT検査を受けるとしたら、HIV感染が不安で一刻も早くHIV検査を受けたい、不安を解消したい、と言う場合でしょう。
わざわざ高い検査費用を出して、限られた医療機関まで行く必要があるのですから。急ぐ必要がないなら、保健所の抗体検査でいい訳ですからね。
従って、あなたがNAT検査を受けて、「陰性」判定が出たら、まずはほっとしてもらって、それから念のために90日が経過して抗体検査を受ければいいのです。
つまり、NAT検査で陰性が出た段階でHIV-1の感染はないと分かりますから、まず安心です。しかし、HIV-2の感染リスクもゼロとは言えませんから、必ず後で抗体検査も受けてHIV-2の感染も検査する必要があります。
◇補足・RT-PCR法
HIV検査のサイトでよく目にする名称に、RT-PCR検査があります。
RT-PCR検査と言うのは、NAT検査の1つです。実は、核酸増幅検査には色々な方法があり、
RT-PCR法もその1つです。
●PCR法(Polymerase Chain Reaction)
●TMA 法(Transcription Mediated Amplification)
●NASBA法(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)
●LCR法(Ligase Chain Reaction)
これらは全て核酸増殖法であり、この核酸増殖法の総称を、
NAT検査(Nucleic acid Amplification Test)と呼びます。
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さて、長々とウインドーピリオドのお話をしてきました。あなたが保健所や病院でHIV検査を受けるとき、必ずウインドーピリオドを確認されます。
あなたが、検査を受ける時点でウインドーピリオドが終わっているのか、まだ終わっていないのか、それを知っているのはあなただけです。
保健所のスタッフも、病院の先生にもあなたのウインドーピリオドは分かりません。
なぜなら、あなたがHIVに感染した可能性がある日がいつだったのか、それを知っているのはあなたしかいないからです。
その日から数えて、現在が何日経過しているのか、それでウインドーピリオドが終わっているのか、終わっていないかを判断します。
ウインドーピリオドが終わっていなけば再検査が必要だし、終わっていれば最終判断が出来ます。そこで、繰り返しになりますが、あなたがHIV検査を受けるとき、
HIV感染の可能性があった日から、何日が経過しているかを自分で確認しておく。
ことが重要かつ必要です。
後は、あなたがHV検査を受ける医療機関のスタッフがあなたをフォローして検査してくれます。
◇まとめ
今までのお話を分かりやすく、表にしておきます。参考にして下さい。
◇検査別 ウインドーピリオド
検査項目/検査方法 | 抗体検査 | 抗原検査 | 抗原・抗体検査 | NAT検査 |
HIV-1 | ○ | ○ | ○ | ○ |
HIV-2 | ○ | × | ○ | × |
IgG抗体 | ○ | × | ○ | × |
IgM抗体 | ○ | × | ○ | × |
p24抗原 | × | ○ | ○ | × |
RNA遺伝子 | × | × | × | ○ |
ウインドーピリオド | 注1)90日 | 注2)30日 | 注2)90日 | 注2)11日 |
注1)保健所における抗体検査では、最近になって60日と言う設定もたまに見ます。60日設定が可能な理由について、私は知りません。注2)検査実施機関によって設定が異なるようです。
ウインドーピリオドの存在を考慮すると、こういう見方も出来ます。
あなたが、保健所でHIV検査を受けて陰性であっても、それは現在のあなたがHIVに感染していないことを証明するものではありません。
今から90日以前のあなたがHVに感染していなかったことを証明するだけです。
■この記事のポイント
○HIVに感染してからHIV検査が正確に出来るようになるまでの期間をウインドーピリオドと呼ぶ。
○ウインドーピリオドは検査の種類ごとに設定が異なる。
○HIV検査の陰性とは、ウインドーピリオド以前の感染がないことを証明するだけである。
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