HIV感染症の母子感染について説明したいと思います。

この記事の参考文献は「性感染症STD」(南山堂)です。

まず、HIV感染症には3つの感染ルートがあります。

●性行為感染

●血液感染

●母子感染

この3つです。

◇母子感染の感染ルートは?

母子感染もまた3つの感染ルートに分かれます。

●胎盤感染

●産道感染

●母乳感染

この3つの感染ルートがあります。

もしも母親がHIVに感染していることに気づかず、無治療で出産した場合の母子感染率は、30%~40%とされています。

具体的には、

●子宮内感染 約5%

●分娩時感染 約15%

●母乳感染 約20%

とされています。

一般に、母子感染の子供は年長になって感染した子供に比べて進行が早く、無治療の場合では1歳までに約15%がエイズを発症するか死亡し、その他の多くは6歳ごろまでにはエイズを発症するとされています。

◇母子感染を防ぐには

妊娠中に母親がHIV感染と分かれば抗HIV治療を行います。現状では母子感染率を0.6%~1.0%程度に下げることが可能と言われています。

特に、母親の体内のウイルス量をHIV-RNA量で1,000コピー/mL以下に抑えることが出来れば母子感染を0%にできたとする調査結果も報告されています。

HIV-RNA量とは、HIVのRNA遺伝子の量を測定した数値で、体内のウイルス量を測る指標となります。

抗HIV治療を行う場合の目標値は40コピー/mL以下だそうですから、治療がうまくいっている場合には母子感染はほとんど防ぐことが出来ます。

こうした抗HIV薬の服用と同時に、出産時の産道感染を防ぐために帝王切開(本人の選択による)や新生児の抗HIV薬投与、母乳の禁止などが行われます。

厚生労働省の関連サイトに、HIV陽性の妊婦が帝王切開で分娩した場合と、帝王切開しなかった場合の比較データがあります。

●帝王切開分娩
母子感染しなかった・・・219人
母子感染した・・・1人

●経腟分娩
母子感染しなかった・・・23人
母子感染した・・・6人

以上のように帝王切開分娩の方が母子感染する確率は小さく、厚生労働省では帝王切開を推奨しています。

ちなみに2010年には母子感染が3件発生しています。そのうちの1件は新聞報道にもありましたが駆け込み出産で事前のHIV検査がされていませんでした。

おそらく残り2件も事前の検査がなかったのではないでしょうか。事前に分かっていればHIV感染を防げた可能性が高いだけに残念です。

以上のようにHIVの母子感染は事前に分かっていれば防ぐことが可能です。しかし、これは日本など検査や治療が行き届いた国のお話であって、南アフリカなどの出産年齢のHIV感染者が多い国では治療が万全ではなく母子感染が深刻な状況にあります。

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