HIV・エイズの症状>HIVとニューモシスチス肺炎
ニューモシスチス肺炎は代表的なエイズ指標疾患の1つであり、ニューモシスチス肺炎の発症をきっかけにHIV感染が判明することも多いのです。
1980年代初め、アメリカでエイズ患者が大きなニュースになったとき、必ずといっていいほどテレビや新聞で見る患者の姿はニューモシスチス肺炎かカポジ肉腫を発症していました。私はリアルタイムでテレビや新聞で見ました。
当時はニューモシスチス肺炎と言う呼び名ではなく、カリニ肺炎と呼んでいました。
今回はエイズ指標疾患の中で最も発症例の多いニューモシスチス肺炎を取り上げてみたいと思います。
◇エイズ指標疾患の中ではダントツに発症例が多い!
当サイトですでにご案内の通り、エイズ指標疾患は23種類あります。HIV感染者がどれか1つでも発症するとエイズ患者と認定されます。
この23疾患のうち、ニューモシスチス肺炎はダントツに発症例が多くなっています。
詳しいデータを見てましょう。厚生労働省エイズ動向委員会が発表した、平成24年(2012年)のデータがあります。このデータを見ると以下のようになっています。
No | 病 名 | 報 告 数 |
1 | ニューモシスティス肺炎 |
245 |
2 | カンジダ症 | 109 |
3 | サイトメガロウィルス感染症 | 73 |
4 | HIV消耗性症候群 | 29 |
5 | 活動性結核 |
26 |
6 | カポジ肉腫 |
23 |
7 | HIV脳症 | 22 |
8 | 非ホジキンリンパ腫 | 20 |
9 | クリプトコックス症 | 17 |
10 | トキソプラズマ脳症 | 11 |
11 | 単純ヘルペスウィルス感染症 | 8 |
12 | 非結核性抗酸菌症 |
8 |
13 | 原発性脳リンパ腫 | 7 |
14 | 反復性肺炎 | 7 |
15 | 進行性多発性白質脳症 |
6 |
16 | 化膿性細菌感染症 | 3 |
17 | リンパ性間質性肺炎 | 1 |
18 | イソスポラ症 |
1 |
19 | クリプトスポリジウム症 |
0 |
20 | コクシジオイデス症 |
0 |
21 | ヒストプラスマ症 |
0 |
22 | サルモネラ菌血症 | 0 |
23 | 浸潤性子宮頸癌 | 0 |
表1.エイズ指標疾患報告数
表1のようにニューモシスティス肺炎の発症例は飛びぬけて多いのです。
もっと分かり易く、表1をグラフにしてみましょう。
グラフ1.エイズ指標疾患の分布
いかがですか?グラフにしてみるといかにニューモシスティス肺炎の発症例が多いかお分かり頂けると思います。
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◇ニューモシスティス肺炎とは?
では、順番が逆になりましたがニューモシスティス肺炎とはいったいどんな病気か説明しましょう。
●ニューモシスティス肺炎の病原菌
酵母様真菌であるニューモシスチス・イロヴェチ(Pneumocystis jirovecii)が病原菌。この真菌は健康な人の体内にも存在していますが、免疫力が働いて増殖を抑えています。
しかし、HIV感染や、がん治療の化学療法、ステロイド剤の長期服用などで免疫力が低下すると発症することがあります。
なお、ニューモシスティス肺炎は以前はカリニ肺炎と呼ばれていました。それはニューモシスティス・カリニという真菌が原因だと考えられていたからです。
確かエイズがアメリカで初めて報告された時代にはカリニ肺炎と呼ばれていたのを覚えています。
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●ニューモシスティス肺炎の症状
発熱・咳・呼吸困難が主な症状です。早期に発見して治療をすれば治りますが、発見が遅れたり治療が不適切だと死亡することもあります。決して軽く扱う病気ではありません。
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●ニューモシスティス肺炎の感染経路
先ほども説明しましたが、元々病原菌であるニューモシスチス・イロヴェチは体内に存在します。それが免疫力低下によって増殖し、発症します。
しかし、近年の研究によるとニューモシスチス・イロヴェチは飛沫感染、空気感染によって人から人へもうつることが分かってきたそうです。
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●ニューモシスティス肺炎の治療
ニューモシスティス肺炎の治療にはST合剤を使います。ST合剤とは、サルファ剤であるサルファメソキサゾールとトリメトプリムという抗菌薬を5対1の比率で配合したものです。
このST合剤を内服薬として使ったり、点滴したりします。ST合剤はニューモシスティス肺炎には非常によく効く薬なのですが、一方では発熱、発疹などのアレルギー反応が出やすいという副作用があります。
副作用が強い場合にはペンタミジン、アトバコンといった代替薬を使います。これらの薬は副作用は少ないのですが効果も弱いとされています。
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◇HIV感染とニューモシスティス肺炎
HIV感染によるニューモシスティス肺炎の場合は、感染者のCD4が200を切ると発症のリスクが大きくなります。従ってCD4が200以下になるとST合剤やペンタミジン、アトバコンを予防目的で使用します。
私が今までHIV陽性者のブログなどを読んだ中で、ニューモシスティス肺炎をきっかけにHIV感染が分かった、という人が何人もいます。
むろん、HIV以外の原因で免疫力が低下しても発症するので、ニューモシスティス肺炎=HIV感染、という訳でもありません。しかし、HIV感染がニューモシスティス肺炎の原因の1つであることも事実でありエイズ指標疾患の中では最も発症例が多いのも事実です。
もしもあなたに発熱、咳、呼吸困難などの症状が出たらすぐに病院へ行くと同時に、HIV検査も考えてください。ニューモシスティス肺炎にしてもHIV感染にしても早期発見、早期治療があなたの命を救います。
今回はエイズ指標疾患の1つ、ニューモシスティス肺炎について説明しました。
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