HIV感染者におけるホジキンリンパ腫、肺がん、肝臓がん、肛門がんの4種類のがんの罹患率は、非感染者に比べて3倍~ 79倍も高くなっている、という記事を見つけました。

この記事はグローバル・エイズ・アップデート(GLOBAL AIDS UPDATE)第260号(第11巻第6号) 2014年(平成26年)11月15日に掲載されたものです。

非常に興味深いデータなので、あなたにもご紹介したいと思います。

◇こんなに違う、罹患率(発生率)!

同記事によると、フランスでエイズ研究チームが病院のデータベースから84,507人ものHIV感染者について、次の4種類のがんの罹患率(発生率)を調べたそうです。調査期間は1997年から2009年です。その結果、4種類とも非感染者に比べて罹患率が高いことが分かりました。

●肺がん⇒非感染者の2.8倍

●肝臓がん⇒同10.9倍

●肛門がん⇒同79.3倍

●ホジキンリンパ腫(後ほど説明)⇒同26.5倍

これをグラフにすると下図のようになります。

まず、罹患率とは何かを説明します。発生率とも呼ばれ、要するに病気になる確率、なりやすさの指標です。ある期間に母数となる集団において新たにその病気になった人の人数から計算します。

例えば、100人の集団がいて、1年間に肺がんになった人が5人いれば罹患率は5%となります。正確には、100人の中にすでに肺がんになっている人がいれば母数から除きます。

次にホジキンリンパ腫について簡単に説明しておきます。ホジキンリンパ腫とは悪性リンパ腫の一種です。白血球の中のリンパ球が悪性のがんになり、全身のリンパ節が腫れたり、こぶが出来たりします。

悪性リンパ腫にはホジキンリンパ腫の他にも非ホジキンリンパ腫があり、こちらはエイズ指標疾患の1つに指定されています。

グラフをご覧頂いてお分かりのように、4種類とも非感染者に比べると罹患率が非常に高くなっています。肛門がんに至っては非感染者の80倍近い罹患率です。

同記事によれば、抗HIV治療(ART)によってCD4が500以上に回復した場合、肺がんと肛門がんの罹患率は非感染者と同じレベル近くまで下がったそうですが、肝臓がんとホジキンリンパ腫は依然として高い罹患率のままだったそうです。

また、HIV感染者はこれらのがんの罹患率が高いだけでなく、発症の年齢が非感染者に比べて若いことも分かったそうです。

◇CD4を500以上に保つには・・・

フランスのエイズ研究者はこの調査結果から、HIV感染者においてはCD4を500以上に保つがことが重要であると訴えているそうです。

そう言えば、当サイトでも何度か記事にしていますが抗HIV医療(ART)による薬の投与開始のタイミングは、かつてはCD4が350以下と言うのがひとつの目安であったのが、近年ではCD4が500を切ったら投与開始の方向にあるようです。⇒『早期のART開始勧告』

このようにHIVに感染した場合、免疫力の指標であるCD4が500以上というのが一つの目安になります。(健康な人の場合、CD4は700~1300くらい)

では、どうやってCD4を500以上に保つか?それには早期発見、早期治療です。自分のHIV感染に気付かないままCD4がどんどん下がって、エイズを発症してから気づく、いわゆる「いきなりエイズ」状態では治療が難しい場合もあります。いきなりエイズ後の治療では生存率が下がることも分かっています。

何しろHIV感染症はエイズ発症まで自覚症状がなく、気づかない場合も多いのです。日本では新規HIV感染者として報告された人の30%以上が「いきなりエイズ」と言う現実があります。いかにHIV検査を受けていない人が多いかを物語っています。

もしもあなたにHIV感染の不安や、心当たりがあるとしたら、すぐにHIV検査を受けて下さい。何も自覚症状がなくてもです。万一、HIVに感染していれば早期のHIV検査はあなたにとって救命的検査となります。

保健所に行けば無料・匿名でHIV検査が可能です。最近では即日検査が増えているので、1時間以内で検査結果が分かります。

どうしても保健所や病院へ行けない人は自宅でHIV検査キットを利用することも可能です。絶対に不安を放置しないようにして下さい。HIV検査の先延ばしはあなたにとって何ひとつメリットはありません。いきなりエイズのリスクが増すだけです。

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