性感染症検査の基本=「一番怖い病気」+「一番感染が多い病気」

私は健康や医療に関するテレビ番組をよく見るのですが、中でもNHKの「総合診療医ドクターG」が最高に好きでした。

この番組では5人の若い研修医が、実際の救急医療の現場であった実例に元づき、患者の症状やヒアリングからその病名を当てるというものです。

台本なしのガチンコ番組で、リアル感が何とも言えず興味をそそりました。

5人の若い研修医にヒントを与えながら真の原因、病名に導くのがベテランの総合診療医です。ある回の放送の中で、ベテラン医師は5人の研修医に向かってこう諭しました。

「救急医療の現場で患者を診察するとき、症状から診て最も可能性の高い病気を考えることは当然だが、同時に、例え可能性は低くても、万一その病気だったときに生命の危機に及ぶような病気は絶対に見落としてはいけない。」

総合診療医の心構えとして、こういった視点が大事だと教えたのです。

確かに、総合診療、救急医療の現場では、どんな患者が来るか分かりません。実に様々な原因で倒れたり、危篤状態になった患者が病院に運ばれてきます。

「この症状なら、たいていの場合はこの病気だ。」

と当たりをつけて、即座に治療を行うことはむろん大事なのですが、しかし、

「もしかしたら、可能性は低いがあの病気かも知れない・・・」

と、わずかな可能性であっても重篤な病気への配慮もまた必要なのです。それが患者の命を守ると言うことなのですね。

私は、性感染症の検査を思うとき、いつもこのドクターGの言葉を思い出します。

・・◇HIVと梅毒は別格!


性感染症で怖い病気と言えば、何と言っても、

「昔梅毒、今HIV」

です。どちらの病気もそのまま放置していると、死に至ります。

今でこそ梅毒は抗生物質で完治出来る病気となりましたが、かつては年間に何千人も死んでいく恐ろしい病気でした。

現在の日本では、毎年新規のHIV感染者が約1,500人、梅毒は800人くらいいます。むろん、これは表に出てくる数字なので、実際の感染者はもっと多いと思います。

それにしても、他の性感染症の感染者に比べれば少ない感染数です。

しかし、いったん感染したとなると、すぐに治療しないと生命の危機に及ぶ可能性があります。ドクターGが言うところの、

「例え可能性は低くても、万一その病気だったときに生命の危機に及ぶような病気」

なのです。

特にHIVは自覚症状が長期に渡って現れないため、あなたが感染に気がつかないまま重症化し、いきなりエイズを発症する危険があります。突然生命の危機に直面するのです。

ですから、もし数ある性感染症の中で、たった1つだけ検査するとしたら、それは迷わずHIV検査です。(他の病気が疑わしい特別な事情があれば別です)

そして梅毒もまたそのまま放置すると死に至ると言う点で、決して軽く見てはいけない感染症です。また、このHIVと梅毒は非常に重複感染の多い性感染症でもあります。

むろん、感染ルートが同じと言うこともあります。更にあなたがもし梅毒に感染していると、炎症や潰瘍を起こしている患部からHIVが感染しやすくなることもあります。

反対に、あなたがHIVに感染していて、更に梅毒にも感染すると、梅毒の症状が進むスピードが早くなったり、より重症化したりすることがあります。

私が保健所でもらったHIV感染予防のパンフレットには、

HIVと最も重複感染が多い性感染症は梅毒である

と書かれていました。

従って、あなたがHIV感染の不安、心配があるとき、梅毒検査も同時に受けることを強くお勧め致します。

・・◇クラミジアと淋菌は感染者が最も多い


一方、クラミジア感染症と淋菌感染症(淋病)は非常に感染者数が多い性感染症です。特にクラミジア感染症は、日本に100万人以上の感染者がいると言われています。

どうしてこんなに感染者が多いかと言えば、クラミジアに感染しても男性の50%、女性の80%には自覚症状が出ないのです。

自分の感染に気がつかないまま、他の誰かにうつしてしまいます。その上、HIVとは比べものにならないくらい感染力が強いのです。

もうひとつ、クラミジアと淋菌の感染者が多い理由は、風俗店でのオーラルセックスです。

クラミジアも淋菌も、性器から喉へ、喉から性器へと感染します。いわゆるファッションヘルスと呼ばれる性風俗では、コンドームなしのオーラルセックスが日常化しており、ここがクラミジアと淋菌の一大感染源となっているのです。

「性感染症 STD」(南山堂)によれば、ソープで働く風俗嬢よりも、ヘルスで働く風俗嬢の方がクラミジアも淋菌も感染者が多いそうです。これはオーラルセックスによる感染だと考えられています。

クラミジア感染症も、淋菌感染症も、症状が出てから病院に駆け込んでも、生命の危機にまで及ぶことはないかも知れません。

しかし、どちらの性感染症も、死ぬことはなくても健康被害は決して軽くはありません。

女性なら子宮頸管炎、尿道炎、子宮内膜炎、卵管炎、腹膜炎と進行し、不妊症や子宮外妊娠、早産、流産の原因となることがあります。

男性なら尿道炎から副睾丸炎、前立腺炎と進行します。場合によっては慢性化します。

クラミジア感染症も淋菌感染症も女性の場合が深刻で、自覚症状が少ないばかりに放置して、不妊治療を受けて初めて感染に気がついたと言う女性も少なくありません。

・・◇なぜ、保健所では梅毒、クラミジア、淋菌検査もするのか?


あなたが保健所でHIV検査を受けようとすると、必ず質問されるのが、

「他の性感染症も検査しますか?」

これです。

多くの保健所では、HIV検査と同時に梅毒、クラミジア、淋菌、B型肝炎などの検査も無料・匿名で受けることが出来ます。(保健所ごとに検査項目が異なります)

これはなぜでしょう?

私が考えるに、理由は2つあります。

●梅毒、淋菌、クラミジアはHIVと感染ルートが共通で、重複感染が多い

●梅毒、淋菌、クラミジアに感染しているとHIVの感染リスクが高くなる

先ほど、梅毒に感染しているとHIVにも感染しやすくなると書きましたが、クラミジア、淋菌も同様です。

性器に炎症があるとHIVの感染確率は健康な人に比べて3倍から5倍、潰瘍でも出来れば数十倍に高まります。

それゆえ、保健所ではこれらの性感染症も同時に検査し、仮にHIVには感染していなくても、今後のHIV感染予防効果を期待するのです。

まぁ、HIVと感染ルートが同じと言えば、性感染症はみな同じ感染ルートですから、今ここに紹介した性感染症の他にも性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、トリコモナス、カンジダなど、どれも同じようなリスクがあります。

もし、あなたにお金と手間を気にしない余裕があるなら、むろん全部まとめて検査するのが一番安心出来る方法です。

でも、現実問題としてはそうもいかないと思います。お金も時間も他に使いたいものが山ほどあることでしょう。

そこで私からあなたへのお勧めとしては、絶対に外してはいけない性感染症検査としてHIV、次に梅毒、クラミジア、淋菌の検査です。

とにかくこの4種類の検査を受けておけば、最も危険な性感染症と、最も感染頻度の高い性感染症のチェックが出来ます。

私自身は、最初にHIV検査を受けたときにはここに書いたような知識がなかったので、HIV以外の検査は受けていません。

でも、次にHIV検査を受けたときには、HIVの他に梅毒、クラミジア、淋菌、B型肝炎、C型肝炎の6つの性感染症を検査しました。

しかも、クラミジアと淋菌については性器感染だけでなく、咽頭(のど)感染も検査して万全でした。

スーパーのお買いものではありませんが、性感染症の検査もどれか1つを受けるより、まとめて検査した方が1検査当たりは安く出来ます。まとめ買いと同じ理屈です。

あなたがHIV感染について、不安に思ったり、心配になって検査を受けようと考えたとき、この記事を思い出してくれたら幸いです。

■この記事のポイント
○HIV感染が不安なとき、梅毒、クラミジア、淋菌など他の性感染症もまた感染の可能性がある。

○特に梅毒、クラミジア、淋菌はHIVとの同時検査が望ましい。

■HIV・梅毒・クラミジア・淋菌が一度にまとめて検査出来ます。

・STD研究所 STDチェッカー TypeE(男性用)
HIV・梅毒・B型肝炎・クラミジア・淋菌:男性用で最も多く使われています。
・STD研究所 STDチェッカー TypeF(女性用)
HIV・梅毒・B型肝炎・クラミジア・淋菌・カンジダ・トリコモナス:女性用で最も多く使われています。


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