新規のHIV感染者やエイズ患者の病変について、厚生労働省エイズ動向委員会が公表しているデータをご紹介しましょう。
あなたもご存知の通り、日本の法律では新規のHIV感染者やエイズ患者を診察した医療機関は、7日以内に都道府県知事へ報告する義務を負っています。
もしも報告を怠ると罰則規定も設けられています。
従って国内の新規HIV感染者やエイズ患者はかなり正確に実態が把握されています。
むろん、HIV感染についてはHIV検査を受けない人も大勢いるので、あくまでもHIV検査を受けて陽性と分かった感染者の実態に限定されています。
では、そうして報告された新規のHIV感染者やエイズ患者がその後どうなったか、それを私やあなたが知ることが出来るでしょうか?
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◇病変データが公表されている!
実は新規のHIV感染者がその後エイズを発症してしまったとか、新規のエイズ患者がその後亡くなったなどのデータが公表されています。
こちらのサイトで厚生労働省エイズ動向委員会のデータを見ることができるのです。
ただし、こちらのデータでは全数確認は出来ません。規のHIV感染者やエイズ患者が法律で届出を義務付けられているのに対し、その後の病変については任意報告となっているのです。
従って前述のエイズ動向委員会のデータも任意で届出のあった件数のみが公表されています。
そのデータによると、2013年末までに新規HIV感染者がエイズを発症したり、エイズ患者が亡くなった件数は以下の通りです。
【1999年~2013年】
●HIVキャリアがエイズを発症した件数 133件
●エイズ患者が亡くなった件数 351件
何回も書きますが、あくまでも任意で報告のあった件数です。実際には届出のなかった多くの実例が存在するはずです。
このデータは1999年からのデータです。
1999年と言えば、抗HIV療法としてARTが始まった頃です。
それまでHIVに感染すると有効な治療法もなくエイズ発症から死に至るケースがほとんどでした。HIV感染症は致死的疾患だったのです。
それが1997年頃から始まったARTと呼ばれる3種類以上の抗HIV薬を使う治療法で体内のウイルス量をコントロールできるようになりました。
完治させることは出来ないまでも検出限界近くまでウイルス量を減らすことが出来るようになったのです。
おかげで免疫力を回復させ、日和見感染症を治療することが可能になりました。
HIV感染者はエイズ発症を防ぐことが出来るようになり、エイズ患者は死亡率を劇的に下げることが出来るようになりました。
多くのHIV・エイズ専門書、専門サイトでそう書いてあります。
しかし、発見が遅れた場合には必ずしも期待された治療効果が出るとは限りません。
HIV感染者がエイズを発症し、エイズ患者が亡くなることもあるのです。
当サイトで何度も記事にしてきましたが、「早期のHIV検査は救命的検査である」とはまさに真実です。
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◇それでもARTの効果はすごい!
ここで1つ、私が作ったグラフを見て頂きましょう。
このグラフは2001年から2013年までの13年間に、HIV感染者、エイズ患者で亡くなった人の死亡原因を任意報告からまとめたものです。
赤色が直接エイズに関係ある原因で死亡した件数です。
例えばニューモシスティス肺炎やサイトメガロウイルス感染症などのエイズ指標疾患が原因で亡くなった場合です。
一方、青色は直接はエイズと関係ない原因で亡くなった件数です。
例えばがんで亡くなったとか脳卒中や心筋梗塞などで亡くなったとかいう場合です。
むろんその場合でも、直接はエイズに関係なくてもHIVに感染していることが影響していることはあり得ます。
また抗HIV薬の副作用で肝機能障害になったり、高脂血症になったりする例が分かっています。
上のグラフからこんなことが分かります。
●2001年から2005年までの5年間は直接エイズが原因で亡くなる人の方が多かった。
しかし、2006年から2013年までの8年間ではエイズ以外の原因で亡くなる患者の方が多くなっている。
これは抗HIV医療が進み、エイズで亡くなる人が減ったためだと思われます。
その一方で元々の持病が原因で亡くなったり、あるいは抗HIV薬の副作用との合併症で亡くなる患者が出てきたりしているのです。
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●2001年から2005年までの5年間の方が、2006年から2013年までの8年間よりも亡くなる患者が多かった。
やはり抗HIV医療は進歩しているのですね。
ただし、前にも書いた通りあくまでも任意の報告によるデータなので実体を100%反映させているとは言えないかも知れません。
でもエイズ病変動向の大筋の判断は間違っていないと思います。・
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◇早期のHIV検査は救命的検査
どんなに抗HIV医療が進歩したと言っても、やはりHIV感染の発見が遅れてしまうとエイズを発症したり、あるいは重大な後遺症が残ることもあります。
また先ほどのグラフで示した通り、HIVの直接、間接的な影響によって死に至る患者もゼロではありません。
HIV感染症、エイズは決して軽い病気になった訳ではないのです。
そして何より、
早期のHIV検査は救命的検査である。
という事実に変わりはありません。
あなたにHIV感染の不安や心当たりがあれば、すぐにでもHIV検査を受けてください。
あなたがHIV検査を先延ばしにしても得られるメリットは何一つありません。
ただいきなりエイズのリスクが増すだけです。
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