HIVがあなたの体内で感染しようとするとき、鍵が2つ必要です。1つはCD4に合う鍵、もう1つはCCR5に合う鍵です。
たまにHIVに感染しない体質の人がいるという記事を目にします。何でも白人の1%はそのHIVに感染しない体質なんだとか。
いったい、なぜその人たちはHIVに感染しないのか?
それはHIVが細胞に感染するために必要な2つの鍵のうち、1つが存在しない体質だからです。この事実は新しい抗HIV薬の開発に役立ちました。
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・・◇HIVが細胞に感染するには2つの鍵が必要
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以前、当サイトでは『ウイルス増殖のメカニズム』という記事を書きました。これはもしもあなたの体内にHIVというウイルスが侵入してきたら、いったいどんなメカニズムで増殖していくのか、それを解説したものです。
詳しい解説はその記事をお読み頂くとして、ここでは簡単におさらいしておきます。
HIVはあなたの体内で、無差別に感染するわけではありません。CD4陽性リンパ球という、免疫機能の中枢細胞にとりついて感染し、この細胞の中で自分のコピーを作って増殖すると同時に、この免疫細胞を破壊していきます。
HVがどうやってCD4リンパ球を見分けるかと言えば、この細胞の表面にあるCD4という受容体を見つけるのです。そしてCD4を見つけると次にCD4という鍵穴にピッタリ合った鍵を取り出し、CD4陽性リンパ球の中に入り込むのです。
私が読んだ多くの専門書にはそんな説明がありました。
しかし、実はHIVがCD4陽性リンパ球の中に入り込むための鍵はCD41つだけではありません。もう1つ鍵が必要なのです。それがCCR5という鍵です。
HIVはCD4という鍵を開け、次にCCR5という鍵を開けます。この2つの鍵が開いたとき、初めてHIVはCD4陽性リンパ球の中へ入り込むことが可能になるのです。
図1.CD4陽性リンパ球の受容体
ところが、冒頭にも書いたように白人の1%は生まれつきCCR5という受容体が存在しません。そこでHIVがいくらCD4陽性リンパ球に感染しようとしても感染出来ないのです。
いわば、CCR5用の鍵は持っているけど、肝心の鍵穴がない状態なのです。鍵穴が初めからないのですから鍵を開けることは不可能です。
このようにCCR5という鍵を開けさせないことがHIVの感染を防ぐことだと分かったのです。
「ならばCCR5という受容体(鍵穴)を持つ多くの人たちに対してもHIVが鍵を開けることが出来ないようにしてしまえば感染できない。」
という発想に至り、ここに『CCR5侵入阻害薬』が誕生しました。文字通り、この薬はHIVがCCR5と結合するのを阻害することによって感染を防ぎます。
この薬の一般名はマラビロク、商品名はシーエルセントリと言います。
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・・◇HIVが持つスペアキー
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『CCR5侵入阻害薬』は日本では2009年にファイザー社から発売になりました。比較的まだ新しい抗HIV薬です。HIV感染を防ぐ非常に強力な薬として使用されています。
ただし、この薬が有効なのは鍵穴がCCR5だけの場合です。それは当たり前の話ですね。なぜなら、『CCR5侵入阻害薬』はCCR5という鍵を使えなくする薬であって、他の鍵には無効だからです。
ところが、CD4陽性リンパ球にはCCR5の他にCXCR4という鍵穴が存在します。HIVはCCR5という鍵が使えなくてもCXCR4が使えればCD4陽性リンパ球に感染することが可能なのです。
そのため、CD4陽性リンパ球の受容体がCD4とCCR5だけなのか、それともCXCR4も存在するのかを検査して治療にあたります。この検査をトロピズム検査と言います。
ちょっと説明がややこしいですが、下の図を見てください。
図2.トロピズム検査
要するにCXCR4はCCR5のスペアキーみたいなものです。CCR5が存在しなくてもCXCR4というスペアキーがあればCD4陽性リンパ球に感染することが可能になります。
さて、ここで疑問が湧いてきます。本文で何度か書いてきたように、白人の1%には生まれつきCCR5が存在しない人がいて、HIVには感染しません。
ではCXCR4が存在する人と、存在しない人はいったいどのくらいの比率なのでしょう?私は専門書や医療サイトでかなり調べてみたのですが分かりませんでした。
それどころか、調べれば調べるほどよけい疑問が増えてしまいました。
多くの医療サイトでは、次のように解説されています。
●CXCR4 を受容体(コレセプター)として利用するHIVをX4 ウイルスと呼ぶ。
●CCR5 を受容体(コレセプター)として利用するHIVをR5ウイルスと呼ぶ。
●両者を受容体(コレセプター)として利用するHIVをR5‐ X4 ウイルスと呼ぶ。
こんな感じです。
このX4ウイルスもR5ウイルスも解説が諸説あって素人の私には理解不能です。ある解説によれば、HIV感染の初期にはR5ウイルスが多く存在し、HIV感染後期になるとX4ウイルスが増えてきて、急激にCD4陽性リンパ球が減少するのだそうです。
結局、私には以下の疑問が残ったままです。
『CXCR4とは誰にでも存在するものか、それともある限られた人にのみ存在するものか?』
これが分かりません。いくら調べても分からないままです。
普通に考えて、トロピズム検査を行うくらいだからCXCR4が存在する人と、存在しない人がいるのでしょう。もしも全ての人にCXCR4とCCR5の両方が存在するなら検査の意味がありません。
CXCR4の存在する人と存在しない人がいるから検査が必要なのだと思います。
ここまで記事を書いてきて、肝心の疑問が晴らせないことに大変くやしい思いをしています。近日中に必ず調べてここに追記として調査結果を載せます。
なお、多くのサイトではCCR5とCXCR4をCD4の補助的受容体と表現しています。この「補助的」という意味合いがイマイチよく理解出来ません。
こうした説明サイトは非常に専門用語が多くて理解するのが難しいです。そこをなるべく分かり易く、当サイトで記事にしようと心がけているつもりです。
とにかく今回の記事は尻すぼみ、肝心のところが抜けたままになってしまいました。大変申し訳ありませんでした。
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・・◇抗HIV治療薬は進化している・・・でも、大事なことは変わりません。
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CCR5という補助の受容体が見つかったのはCD4が見つかってから10年後だそうです。HIV感染のメカニズムが解明されるに従って新薬も開発されていきます。
今なお世界中の医学者が抗HIV薬を研究しています。今後も次々と新薬が登場することでしょう。しかし、残念ながら一度HIVに感染すると完全にHIVを駆除する薬はメドがたっていません。あくまでも体内のHIVを増殖させないための薬しかないのです。
だとすれば、やはりHIVに感染しないよう予防すること、そしていきなりエイズを発症しないよう早期のHIV検査が重要です。
どんなに新薬が登場してもエイズ発症後では重篤な症状から死に至る例が存在します。早期のHIV検査が救命的検査であることは間違いありません。
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