HIVを理由に解雇されたとして、福岡県の看護師が損害賠償訴訟をおこました。
福岡県の総合病院で働く看護師がHIV感染を理由に休職を強要され、その結果退職を余儀なく
されたとして、約1,100万円の損害賠償訴訟を起こしました。
ニュースソースはこちら⇒『西日本新聞 1/13』
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・・◇大学病院が本人に無断でHIV陽性を通知
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今回のニュースでは看護師は2つの法人を相手に訴訟を起こしています。
①対大学病院
この看護師は昨年6月頃から体調が悪くなり、8月に大学病院でHIV検査を受けたところ陽性
判定を受けた。
大学病院はこの結果を看護師本人に無断で看護師の勤務先である総合病院に通知した。
これは個人情報の守秘義務違反であるとして訴えた。
②対総合病院
看護師の勤務先では、大学病院からの通知を受けて看護師に対し、
「患者に感染させるリスクがなくなるまでは休職してほしい。90日以上休職すると退職扱いに
なるが仕方ない。」
と告げ、事実上解雇した。
これはHIVを理由に解雇してはならないとした厚生労働省のガイドラインに反しており、不当解雇
であるとして訴えた。
総合病院側が看護師に告げたとされる、
「患者に感染させるリスクがなくなるまで」
とは、どう言う意味でしょうか。病院側が院内感染を防ぐための手立てをするから、それが完備
できるまでは休職して待っていて欲しい、と言う意味だったのでしょうか。
それなら90日になったからと言って看護師を退職させるのは全く不当ですね。
あるいは、看護師自身の問題として、患者に感染しなくなるまでは休職しろ、と言う意味でしょうか。
ならば全くナンセンスでHIV感染が完治するはずがありません。いくら待っても不可です。
そんなことは分かり切った話であり、要するに退職を迫ったことになります。
今のところ、訴えられた大学病院も総合病院もコメントを出していません。
HIVに感染した医療従事者が不当解雇だとして訴訟を起こすのは日本では初めてのケース
だそうです。
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・・◇厚生労働省の指導では?
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今回は医療現場で起きた差別(あえて差別と書かせてもらいます)ですが、一般の企業に
おいても過去にこうした差別は発生しています。
こうした差別、偏見を受けて厚生労働省は1995年(平成7年)2月20日付けで、全国の
各都道府県の労働基準局あてに
と言う通知を出しています。
この通知では、HIVに感染していることを理由に解雇してはならないこと、他の病気の患者と
同等に扱い差別してはならないことが明記されています。
ただ、今回のような医療現場でのHIV感染者に対するガイドラインが含まれていませんでした。
2009年、愛知県の病院で、HIVに感染していることを理由に看護師が病院側から退職勧奨を
受けたことがニュースになりました。(発覚してニュースになったのは2010年4月です)
このとき、病院側がHIV陽性の看護師に対して行った退職勧奨に対して、世論は賛否両論に
別れました。
病院側の対応をを正しいとする意見では、こんな理由を上げていました。
「HIV感染者を医療現場から排除するのは、差別の問題てはなく、区別である。医療と言う仕事
には適正ではない。心臓発作の持病がある人を飛行機のパイ ロットとして雇わないのと同じだ。」
この意見は一見まともなように聞こえますが、実際のリスク管理から言えば不当な偏見です。
飛行機のパイロットが心臓発作の持病を抱えるリスクと、病院の看護師がHIV陽性で院内感染を
起こすリスクが同じであるはずがありません。
そこで、厚生労働省は2010年(平成22年)4月30日付けで先のガイドラインを改定し、医療に
携わる職場においてもHIVを理由に差別したり、解雇しないよう通知を出しました。
『「職場におけるエイズ問題に関するガイドラインについて」の一部改正について』
従って、今回福岡県で起きた看護師への休職の強要、そして退職させたことは、この通知から
すると総合病院側の不当な扱いであったと言えます。
むろん、その前段の大学病院が看護師本人に無断で勤務先である総合病院に検査結果を通知
したことは守秘義務違反である可能性が高いと思います。
病院側のこうした対応の背景には、万一院内感染でも起こしたら大変な責任問題になるとか、
風評被害で患者が減ると困るとか、そういった思惑があるのでしょう。
しかし、院内感染はHIVだけではありません。ウイルス性の感染症は他にいくらでもあります。
そうした感染症の院内感染対策が万全であればHIVに対しても万全であるはず。HIVだけを特別
扱いする科学的な根拠はないはずです。
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・・◇HIV感染者が働ける社会が必要
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日本においては未だに新規のHIV感染者は増加傾向にあります。その一方で、抗HIV医療は進み、
適正な治療を受けていればエイズを発症することなく仕事を続けることが可能になりました。
これは言い方を変えると、HIVに感染しても仕事して生活を支える必要があるのです。
今回の件について、国立病院機構大阪医療センターの白阪琢磨・HIV/AIDS先端医療開発
センター長は次のようにコメントされています。
「医療の進歩で、HIVは寿命を全うできるほどの病気になった。通院や服薬の必要はあっても、
治療を受け症状が安定していれば働くのに支障はない。治療がうまくいけば、血液中のウイルスも
測れないぐらい少なくなる。針刺しが万一あっても、感染しないよう対応するマニュアルも病院に
整備されている。他の感染症と区別する必要はなくなっている。」
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