TOPコラムトップ>HIV感染症と糖尿病

HIV感染症と糖尿病

HIV感染症は今や慢性疾患に近づきつつあります。では、糖尿病と比べてどちらが怖い病気でしょうか。

こんな二者択一の質問がネットの掲示板に出ていました。かつて致死的疾患として恐れられたHIV感染症は、1997年ごろから始まったART(anti-retroviral therapy)という抗HIV療法によって劇的に予後が改善され、生存率が高まりました。

エイズ発症前に治療を開始すればエイズの発症を防ぐことが出来るようにもなりました。こうした状況から、HIV感染症は慢性疾患に近い病気になりつつあると専門書に書かれているのを見ました。

では、従来からの慢性疾患である糖尿病と比べて、どちらが怖いでしょうか。あなたはどう思いますか?

・・◇私の結論は分かりきっている


最初に私の考えを書きます。

HIVも糖尿病も怖い病気であり、比較してどちらが怖いかを論ずることには意味がない。

私はそう思います。

HIVが致死的疾患から慢性疾患になりつつあると言っても、

●他の人にうつすリスクは消えない

●薬での治療は生涯治療となり、しかも薬を飲む時間や量の管理は非常にシビアである

●薬を長期服用するために起きる副作用もある

こうしたリスク、大変さがあります。

一方、糖尿病も怖い病気です。どんな病気かは後で詳しく書きますが、私の身近に2人の糖尿病患者がいます。一人は私の義兄です。若い頃から糖尿病で、ずっと病院で治療を受けていました。食事制限も守り、運動もやっていました。

それなのに、50代半ばを迎えた数年前に失明しました。あれほど節制して、ちゃんと治療も受けていたのに、失明を防げませんでした。

もう一人は私の友人の義父です。糖尿病で両足を切断しました。こちらも治療を受けていたのに、どうすることも出来なかったそうです。

今回は番外編みたいにHIVを離れ、糖尿病のお話になってしまいました。最低、年に1回は糖尿病のチェックをお勧め致します。


・・◇糖尿病とはこんな病気です


まず、あなたは糖尿病なんて自分には無縁だと思っているかも知れませんね。しかし、今や糖尿病は国民病と呼ばれるほどに患者数が多く、その予備軍まで入れると実に2000万人を超えています。(2007年国民健康・栄養調査による)

しかも、この10年間で糖尿病患者・予備軍は30%増と言う異常な増え方をしています。あなたの周囲にも糖尿病患者がいませんか?

しかも糖尿病の初期は何も自覚症状がありません。もしかしたら、あなたが気づいていないだけで、あなたの血糖値も高くなっているかも知れません。ぜひ、この記事を読んで他人事だと思わずあなたもご用心ください。

では、そもそも糖尿病とはどんな病気なのでしょうか。そこからお話していきたいと思います。

糖尿病を一言で言えば、

「慢性的に血糖値が高い状態が続く病気」

です。糖尿病はいったん発症すると、他の多くの病気と異なり、自然治癒することがありません。治療をしない限り、どんどん悪化していくばかりです。

まず、血糖から説明しましょう。血糖とは、血液中を流れるブドウ糖のことです。私たちが食品として食べた炭水化物が分解、消化されて、最後はブドウ糖となって腸から吸収され、血液中に入ります。

ブドウ糖は筋肉や脳の活動に欠かせないエネルギーです。従って、血糖は常にある一定の濃度に保たれて血液によって全身に運ばれます。

この血中ブドウ糖の濃度を「血糖値」と呼びます。血糖値は、健康に問題のない正常な状態では「70~120mg/dl」の範囲にコントロールされています。(dl=デシリットル。1リットルの1/10です。)

この血糖値が200mg/dlを超えると糖尿病の疑いがあり、更に検査を追加で受けることになります。(ただし、血糖値は検査の方法によって正常・異常の判断基準値が異なります。)


・・◇血糖値が一定に保たれているしくみ


私たちの体で血糖値が「70~120mg/dl」に保たれているのは、血糖値を上げるホルモンと、血糖値を下げるホルモンが正常に機能することによって正常な範囲に収まっています。そのホルモンの働きを説明しましょう。

私たちが激しい運動をしたり、食事を長時間取らなければエネルギー源であるブドウ糖が不足状態になります。すると私たちの体はブドウ糖の補充を求め、血糖値を高くしようとします。このときに作用するのがアドレナリンやグルカゴンと呼ばれるホルモンです。

一方、血糖値が高い状態になると、エネルギー源として消費されないブドウ糖はグリコーゲンに形を変えて肝臓や筋肉に蓄えられます。更に余ったブドウ 糖は中性脂肪となって脂肪細胞に貯まります。このように余分なブドウ糖を貯蔵に回す働きをするホルモンがインスリンです。インスリンの働きによって血糖値 は下がるのです。

私たちの血糖値を下げる働きをするホルモンはインスリンの他になく、もしもインスリンの分泌が不足したり、その働きが不十分だと血糖値は上がったままになります。この状態が慢性的に続くようになったのが糖尿病です。

では、血糖値が高い状態が続くと、どんな症状が起きるのでしょうか。糖尿病では、血糖値が高いことによって起きる症状と、糖尿病が引き金となって起こす合併症があります。これらの症状、合併症の多くは決して軽いものではありません。

それなのに、糖尿病の初期段階ではこれといった自覚症状がありません。頭痛や腹痛、嘔吐、下痢など、何かの症状が現れれば私たちも注意もしますが、 まったく何も症状が出ないのです。そこが糖尿病の怖いところでもあり、何かの症状が出たときにはかなり悪化している可能性もあります。

従って、糖尿病は何も自覚症状がなくても健康診断などで血液検査を受け、定期的にチェックする必要があります。

以上のように、糖尿病とは、私たちの血液中のブドウ糖濃度、すなわち血糖値が正常範囲を超えて高い状態のままになっている病気です。


・・◇糖尿病の自覚症状


糖尿病の自覚症状には2通りあります。糖尿病本来の高血糖が原因で発症する自覚症状と、糖尿病以外の病気との合併症で発症する自覚症状の2通りです。まずは高血糖による自覚症状からご紹介しましょう。

●喉が異常にかわく

●尿の量や回数が異常に増える

●食欲が異常に強くなる

●強い疲労感、倦怠感がある

●水分を沢山とる

●甘いものが急に欲しくなる

●いくら食べてもやせる

こういった自覚症状が出てくると、高血糖の可能性があります。高血糖であるということは、食べたものがエネルギーとして効率よく使われていないと言うことです。そのために疲れやすくなったり、やせたりします。また、更にエネルギーを補給しようとして食欲が増進します。

また、血糖が腎臓から排出されるときに水分を多量に必要とするため、尿の量や回数が増えます。すると今度は体の水分が不足してくるため、喉がかわいて水分補給が多くなってくると言うわけです。


・・◇糖尿病による合併症


糖尿病が怖いのは、糖尿病自体よりも合併症にあると言えます。特に、「糖尿病網膜剥離」、「糖尿病腎症」、「糖尿病神経症」が糖尿病の3大合併症として知られています。

この3つの合併症についてはそれぞれに取り上げて詳しく解説しますので、ここでは概略を説明しておきます。糖尿病の合併症全体をイメージして頂けるといいと思います。

・・1.糖尿病網膜症

糖尿病になると、慢性的に血糖値が高い状態が続きます。これは血液中のブドウ糖が多過ぎる状態であり、余分なブドウ糖が血管壁に付着し、血液の流れ をじゃましたり、血管を詰まらせたりします。最後には血管をボロボロにしてしまいます。この血管障害を真っ先に受けるのは細い毛細血管です。そして目には この細い血管が集中しています。

目に通っている細い血管から血液がにじみ出すのが眼底出血です。眼底とは、文字どおり、眼球内の底(奥)のほうにある組織全体に対する名称で、網膜 (もうまく)、脈絡膜(みゃくらくまく)、硝子体(しょうしたい)、視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)といった組織があります。

眼底出血を起こしたときに適切な処理をしないと、更に悪化して網膜剥離を起こし、失明につながる恐れがあります。実は、私の義兄がこの糖尿病網膜症による網膜剥離で失明しています。

義兄は随分と節制した生活を送り、病院でちゃんと治療を受けていたにもかかわらず、進行を止めることは出来ず、50代半ばで失明してしまいました。このとき私は初めて糖尿病の恐ろしさを身近に感じました。

・・2.糖尿病腎症

目に細い血管が集中しているように、腎臓にもまた細い血管が集まっています。特に腎臓の内部には糸球体(しきゅうたい)と言う毛細血管の束があります。この毛細血管の束が障害を受けて腎不全や尿毒症となってしまいます。

腎臓の働きは一言で言えば、血液をろ過して尿を作り、老廃物を体外へ排出することです。そして体の塩分や水分の量を調節しています。更には血圧の調整にも働いています。腎不全に陥ると、こうした腎臓の重要な働きが機能しなくなります。

・・3.糖尿病神経障害

糖尿病の合併症は血管だけでなく、神経に対しても発症します。この神経障害は体全身、いたるところで症状が出ます。顔面を動かす神経が麻痺したり、手足がしびれたりします。

以上が糖尿病の3大合併症です。糖尿病になって高血糖状態が5年続くと糖尿病神経障害が出て、10年続くと糖尿病網膜症が出て、15年続くと糖尿病 腎症が発症すると言われています。糖尿病神経症が真っ先に発症するのですが、糖尿病と診断された時点ですでに発症していることもあります。

糖尿病は初期段階では非常に自覚症状が薄いのですが、気付かずに放置しているとここで説明したような合併症の危険があります。何も自覚症状がなくても定期健康診断を受けてチェックすることが大事です。早期発見、早期治療によって大事に至らずにすみます。


以上、糖尿病について説明してきました。冒頭のようなHIV感染症と糖尿病はどちらが怖い病気か、といった理論はあまり意味がないと思います。そんな一般論より、私にとって、あなたにとって、HIVがどんな病気か、糖尿病がどんな病気か、それが問題です。

私は現在肝機能障害と高血圧症で治療を受けています。いずれも生活習慣病と呼ばれるものです。従って、私にとって糖尿病は最重要警戒疾患です。今の状態で糖尿病を患うと非常に危険だからです。

私は3ヶ月に1回の頻度で定期的に検査を受け、糖尿病のチェックをしています。

一方、今の私にはHIV感染症は脅威ではありません。かつてHIV感染の不安に悩み、検査で陰性と分かってからはかなりセーファーセックスに注意するようになりました。もう二度とあんな怖い思いをしたくないと決心したのです。

でも、これはあくまでも私個人の事情です。あなたにとってはまた別の事情があって、HIV感染症の方が大きな脅威になっているかも知れません。そこは一般論で論じることが出来ない範疇だと思います。

以上、今回はHIVやエイズを離れて糖尿病のお話でした。

ちなみに、ネットで探してみたら、糖尿病も郵送検査ができるんですね。病院に検査に行く時間が取れないあなたはこれを使ってみてはいかがでしょうか。

*自宅で糖尿病検査が受けられます。

糖尿病検査キット


HIV感染症(エイズ)の症状完全ガイド TOP