平成23年のエイズ動向は新規のHIV感染者が前年より減少しました。感染の拡大傾向は止まったのでしょうか?

2月24日に厚生労働省エイズ動向委員会から、平成23年の第4四半期(10月~12月)のエイズ動向が発表になりました。すでに発表済みの第1四半期から第3四半期までのデータと合わせて平成23年通期のエイズ動向速報となります。

管理人追記1):2012年7月31日に厚生労働省エイズ動向委員会から「平成23年エイズ発生動向年報」が発表になりました。そのデータを本記事に追加修正致しました。従って当記事が正式版です。(8/14)

管理人追記2):2015年2月24日付で平成24年の速報が出ました。こちらからどうぞ。

『エイズ動向2014年(平成26年)エイズ動向』

◇平成23年エイズ動向

さっそく主要数値をご紹介しましょう。

表1をご覧下さい。

平成23年新規HIV感染者・エイズ患者(人) (平成22年)
1.新規HIV感染者 1,056 1,075
2.新規エイズ患者 473 469

(表1)平成23年新規HIV感染者・エイズ患者

平成23年の新規のHIV感染者は、平成22年よりも19件減って1,056件でした。これは、過去4番目に多い数字となっています。ちなみに過去最多は平成20年の1,126件となっています。

一方、平成23年における新規のエイズ患者は、平成22年よりも4件増えて473件でした。これは過去最多です。

では、新規HIV感染者とエイズ患者の過去12年間の推移をグラフで見てみましょう。

平成23年エイズ動向グラフ
(グラフ1)新規HIV感染者・エイズ患者の推移

いかがでしょう。あなたはこのグラフから日本のHIV感染拡大は止まったと思いますか?

今回のデータを発表したエイズ動向委員会の岩本委員長は報告書の中で、

「新規HIV感染者の増加傾向が鈍化している可能性について議論された。」

とコメントされています。しかし、議論の結果がどうだったのかは不明です。ただ、

「引き続きHIV感染対策を強化すべきである。」

ともコメントされていますから、少なくともHIV感染が楽観できるレベルだとは言えないのだと思います。

HIV感染の拡大傾向が止まったと簡単には言えない理由を私なりに2つのデータから指摘したいと思います。

◇HIV感染の拡大が止まったと言えない2つの理由

まず、新規HIV感染者の増加傾向が止まっているように見える傾向についてです。グラフ1からもお分かりのように、平成20年まではずっと右肩上がりだったHIV感染者は、平成21年に減少に転じ、そこからは増加していないように見えます。

ところが、ここに1つ気になるデータがあります。保健所などで行っているHIV抗体検査の受検数です。グラフ2をご覧下さい。

保健所HIV検査受検数
(グラフ2)保健所HIV検査受検数)

保健所や自治体で行っている、無料匿名のHIV抗体検査を受ける人は、平成20年まではずっと右肩上がりで増え続けていました。それが平成21年から減少に転じてしまったのです。平成23年には多少前年から増えましたが依然としてピーク時の74%程度にとどまっています。

グラフ1とグラフ2を並べてご覧になれば、お気づきの通り、HIV感染感染者が減少に転じたのはHIV抗体検査が減少に転じたのと同時なのです。もしかしたら、HIV検査を受ける人が減ったから新規のHIV感染者報告数が減っただけで、潜在的なHIV感染者は増加し続けているのではないか?こんな心配が浮かびます。

また、新規のエイズ患者は過去最多を記録し、一向に減少に転じる気配がありません。このように、新規HIV感染者も、新規エイズ患者も、今の段階では簡単に増加傾向が止まったとは言えません。

ましてや、国内のエイズ動向とあなたご自身のHIV感染は何の関係もありません。あくまでも、あなたがHIV感染の不安を感じたら、すぐにHIV検査を受けることをお勧め致します。

■「もしかして・・・」 HIV感染が不安になったら迷わず検査。自宅で検査が出来ます。
・STD研究所 STDチェッカー TypeJ(男女共通)


では、この他にエイズ動向委員会から発表になった主なデータをご紹介しておきます。

◇新規HIV感染者・エイズ患者の感染ルート

●新規HIV感染者の感染ルート

新規HIV感染者感染ルート
(グラフ3)新規HIV感染者感染ルート

新規HIV感染者の87.9%が性的接触によって感染しています。いかにセーファーセックスが重要かお分かり頂けると思います。

●新規エイズ患者の感染ルート

新規エイズ患者感染ルート
(グラフ4)新規エイズ患者感染ルート

新規エイズ患者の81.6%が性的接触による感染です。

◇新規HIV感染者・エイズ患者の年齢別分布

●新規HIV感染者の年齢別分布
新規HIV感染者の年齢別分布グラフ
(グラフ5)新規HIV感染者の年齢層分布

新規のHIV感染者は20代から30代が多いのですが、50歳以上にも全体の13.3%にあたる感染者がいます。HIV感染に年齢は関係ないことが分かります。高齢者のHIV感染が拡大していることは数年前から警鐘が鳴らされているところでもあります。

●新規エイズ患者の年齢別分布
新規エイズ患者の年齢別分布グラフ
(グラフ6)新規エイズ患者の年齢層

新規エイズ患者については、50歳以上が全体の25.8%を占めています。エイズ発症までの潜伏期間を考慮すると、HIV感染者よりも高齢化するのは当然です。

しかし、同時に高齢者になるほどHIV検査を受ける人が少ないと言うことも理由の1つにあるのではないでしょうか。私自身もそうでしたが、高齢者ほど保健所に出向いての対面検査は苦手だと思います。どうしても世間体が悪いと感じたり、恥ずかしいと感じたりします。

あるいは、HIV感染に対する危機感そのものが若い世代に比べて薄いと言えるかも知れません。自分だけは大丈夫みたいな、根拠のない自信を持っている人が多いのではないでしょうか。何が危険か知らないことが、最も危険です。

◇いきなりエイズ

自分がHIVに感染していることに気が付かず、エイズを発症してから初めて感染に気付くことを「いきなりエイズ」と呼びます。現在の抗HIV医療では、エイズ発症前に感染が分かればエイズの発症を防ぐことが出来るため、「いきなりエイズ」は非常に残念なことです。

平成23年いきなりエイズ発症率
(グラフ7)いきなりエイズ報告率

グラフをご覧頂いてお分かりのように、平成20年まではいきなりエイズの報告率は低下し続けていました。それが一転、平成21年からは増加に転じています。平成23年も30.9%と、前年から約1%増えました。

「いきなりエイズ報告率」とは、HIVに感染したと報告された人の中で、すでにエイズを発症していた人の割合を言います。(新規エイズ患者)÷(新規HIV感染者+新規エイズ患者)×100%

なお、「いきなりエイズ報告率」とは私がかってに名づけたもので広く周知された呼び方ではありません。

いきなりエイズの報告率が増加に転じたのは、保健所などでのHIV抗体検査受検数が減り始めた平成20年と重なります。HIVに感染してもエイズ発症までは潜伏期間が数年あるため、どこまで2つのデータに相関関係があるのか分かりませんが、多少なりとも関係するのではないでしょうか。

ともかく、「いきなりエイズ」は早期のHIV検査で防ぐことができます。早期のHIV検査は救命艇検査なのです。

◇全国都道府県別HIV感染者・エイズ患者

平成23年の都道府県別の新規HIV感染者、エイズ患者は以下の通りです。び昭和60年(1985年)からの累計データといっしょにまとめてみました。

区分 新規HIV感染者 新規エイズ患者
都道府県 2011年 累計 2011年 累計
北海道 18 173 10 115
青森県 3 42 1 23
岩手県 0 22 2 28
宮城県 12 96 5 60
秋田県 2 17 2 22
山形県 1 20 1 22
福島県 4 53 1 38
茨城県 16 472 8 289
栃木県 14 206 8 159
群馬県 7 146 8 113
埼玉県 28 401 16 277
千葉県 35 628 21 425
東京都 320 5,167 84 1,658
神奈川県 58 935 25 470
新潟県 6 69 4 50
山梨県 9 101 1 41
長野県 13 278 6 175
岐阜県 21 101 12 84
静岡県 32 333 12 159
三重県 7 118 5 74
愛知県 76 784 50 401
富山県 2 27 2 24
福井県 4 36 2 22
石川県 7 56 4 22
滋賀県 2 54 4 39
京都府 10 185 6 91
大阪府 169 1,670 65 526
兵庫県 29 283 17 157
奈良県 8 79 5 53
和歌山県 5 42 3 38
鳥取県 1 12 0 8
島根県 4 16 0 4
岡山県 9 77 7 56
広島県 17 157 8 62
山口県 3 48 3 15
徳島県 7 23 0 14
香川県 5 36 5 28
愛媛県 6 57 4 40
高知県 1 27 2 14
福岡県 40 299 19 148
佐賀県 3 12 3 12
長崎県 5 36 2 21
熊本県 6 57 5 43
大分県 4 30 3 17
宮崎県 7 27 5 21
鹿児島県 7 58 6 39
沖縄県 12 137 11 75
合計 1,056 13,704 473 6,272

(表2)都道府県別新規HIV感染者と新規エイズ患者

平成23年のデータはあくまでも速報値であり、後日発表される正式版では修正される可能性があります。

また、あなたの住んでいる都道府県のHIV感染者、エイズ患者が少ないからといって、あなたがHIVに感染するリスクが小さい訳ではありません。決して誤解なきようご注意ください。

◇献血件数と陽性件数

最後に、平成23年全国の献血から見つかったHIV陽性の件数をご紹介します。

献血件数とHIV陽性件数
(グラフ80)献血件数とHIV陽性件数

当サイトの色々な記事でも書いていますが、献血はHIV検査の代わりにはなりません。検査結果は教えてもらえないし、感染初期の血液だと検査をすり抜けて輸血に使われてしまう危険もあります。

どうか、あなたがHIV感染の不安があるなら献血ではなく保健所に行って下さい。

以上、平成23年の新規HIV感染者、新規エイズ患者の動向報告をお届け致しました。今回の発表は速報値なので、正式版が発表されたときには数値が増えている可能性があります。例年だと8月くらいに発表になるはずです。

最後にもう一度繰り返します。あなたにHIV感染の不安があるなら、すぐにでもHIV検査を受けて下さい。あなたのHIV感染は検査を受けるしか判定する方法はありません。

私自身もそうでしたが、あなたにどんなに怪しい症状が出ていても感染していないかも知れません。あるいは全く自覚症状がなくても、HIVに感染していることもあり得ます。でも、エイズ発症前にそれが分かれば薬でエイズの発症を抑えることが出来ます。

今や早期のHIV検査は救命的検査です。

あなたが、HIV検査を受ける決心はついたけど、どうしても保健所に行く時間がなかったり、誰にも知られず、誰にも会わずにHIV検査を受けたいと思うならこんな方法もあります。実は私自身もこれを使用しました。

 

アイコンボタン不安なら今すぐHIV検査。「いきなりエイズ」を防ぎましょう。
フッターバナー3

症状では絶対分かりません。不安があれば今すぐ検査!
タイプJ ・HIV検査専用です。(男女共通)
・私はたったの10分で終わりました。

矢印STDチェッカー タイプJ
この3つはぜひ同時検査!重複感染はより危険です。
タイプO ・HIV・梅毒・B型肝検査。(男女共通
・HIVと最も重複感染の多い性感染症。

矢印STDチェッカー タイプO
まずはこれだけ検査で一安心。一番人気のキットです。
タイプE ・HIV・梅毒・B型肝炎
・クラミジア・淋菌
・一番怖い病気と一番感染者が多い病気

矢印タイプE 男性はこちらから

矢印タイプE 女性はこちらから