エイズ指標疾患がどのような頻度だったのか、平成24年の状況をご紹介します。
2013年5月22日に厚生労働省エイズ動向委員会から、「平成24年エイズ発生動向年報」が発表になりました。そのデータからエイズ指標疾患の発生状況をご紹介したいと思います。
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◇エイズ指標疾患とは何か?
平成24年の状況をご紹介する前に、エイズ指標疾患とは何かをおさらいしておきます。当サイトでは『エイズ指標疾患とは?』という記事を書いています。ここに詳しく書いているのですが、HIV感染者が免疫不全によって発症する代表的な日和見感染症を指し、日本では合計23疾患が決められています。
すなわち、HIV感染者がエイズ指標疾患と決められた感染症のどれか1つでも発症すると、エイズ患者となります。逆に言えばHIVに感染してもエイズ指標疾患を発症するまではエイズ患者ではありません。
また、HIVに感染していない人がエイズ指標疾患を発症してもエイズ患者ではありません。(当たり前ですけど念のため)
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◇平成24年エイズ指標疾患発症状況
それでは平成24年に発症報告のあったエイズ指標疾患をご紹介したいと思います。参考までに平成23年と平成22年の状況と合わせてご紹介します。
疾患名 | 平成24年 | 平成23年 | 平成22年 |
ニューモシスティス肺炎 | 245 | 284 | 284 |
カンジダ症 | 109 | 131 | 132 |
サイトメガロウイルス感染症 | 73 | 76 | 77 |
HIV消耗性症候群 | 29 | 36 | 41 |
活動性結核 | 26 | 26 | 22 |
カポジ肉腫 | 23 | 19 | 16 |
HIV脳症 | 22 | 14 | 20 |
非ホジキンリンパ腫 | 20 | 18 | 15 |
クリプトコックス症 | 17 | 11 | 15 |
トキソプラズマ脳症 | 11 | 8 | 4 |
単純ヘルペスウイルス感染症 | 8 | 14 | 4 |
非結核性抗酸菌症 | 8 | 7 | 5 |
反復性肺炎 | 7 | 6 | 6 |
原発性脳リンパ腫 | 7 | 2 | 3 |
進行性多発性白質脳症 | 6 | 4 | 8 |
化膿性細菌感染症 | 3 | 3 | 4 |
リンパ性間質性肺炎 | 1 | 2 | 2 |
イソスポラ症 | 1 | 0 | 0 |
ヒストプラズマ症 | 0 | 1 | 0 |
クリプトスポリジウム症 | 0 | 0 | 2 |
コクシジオイデス症 | 0 | 0 | 0 |
サルモネラ菌血症 | 0 | 0 | 4 |
浸潤性子宮頸癌 | 0 | 0 | 1 |
合計 | 616 | 662 | 665 |
表をご覧頂いてお分かりのように、平成24年に報告された指標疾患の合計は616件でした。平成24年は新規のエイズ患者件数が445件ですから、エイズ指標疾患の重複発症があったものと思われます。
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◇ニューモシスティス肺炎とカンジダ症
ニューモシスティス肺炎とカンジダ症について補足説明をしておきます。
●ニューモシスティス肺炎
以前はカリニ肺炎と呼ばれていました。病原菌がニューモシスチス・カリニ (Pneumocystis carinii) だと思われていたのでそう呼ばれていたのです。
しかし、ニューモシスチス・イロヴェチ(Pneumocystis jirovecii)が本当の病原菌であることが分かり、名前が変更になりました。
なお、ニューモシスチスは以前は原虫だと考えられていましたが、現在では真菌の仲間だとされています。上記表をご覧頂いてお分かりのように、エイズ指標疾患では最も発症例が多く、治療せずに放置すると死に至ります。
1980年代、初めてエイズ患者がメディアに登場したころ、多くの場合このニューモシスチス肺炎患者だったと記憶しています。
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●カンジダ症
カンジダ症の病原菌であるカンジダ真菌は常在菌であり、健康な人の体にも存在します。典型的な日和見感染症なのですが、発症部位が様々です。
性器、口腔、食道、肺、気管支などに発症します。このうち、エイズ指標疾患と指定されているのは、食道、気管支、気管、肺に発症した場合です。性器や口腔にカンジダが発症してもエイズ指標疾患になりません。
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以上、平成23年のエイズ指標疾患発生状況をご紹介しました。かつてはこうしたエイズ指標疾患を発症すると有効な治療法もなく致死的でしたが、現在では抗HIV治療によって免疫不全が快復できるようになり、死に至ることは激減しました。
更に言えば、エイズ発症前にHIV感染が分かれば薬の治療でエイズ発症を防ぐことも可能になっています。あなたに何も自覚症状がなくてもHIV感染の不安や心当たりがあれば、ぜひ保健所や病院でHIV検査を受けて下さい。早期のHIV検査は救命的検査です。
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