B型肝炎と言えば注射による血液感染のイメージが強いですが、
性感染症でもあります。
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つい最近もテレビ、新聞で度々取り上げられているB型肝炎訴訟。これは予防接種のときに
注射器を使いまわしした為におきた血液感染訴訟です。国が感染の可能性を知りながら
放置したとして訴訟になっています。
しかし、B型肝炎が性行為によっても感染する、性感染症の1つであることは間違いあり
ません。
しかも、HIVとの重複感染が非常に多い性感染症なのです。
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◇B型肝炎とはどんな病気?
B型肝炎ウイルス(HBV)によって感染する病気で、HBVの感染には、一過性感染と、
持続感染の2種類があります。
更に、一過性のうち80%は症状のない不顕性感染であり、残り20%がB型急性肝炎と
なります。
急性肝炎はまれに劇症化することがあり、その場合には高い死亡率が報告されています。
一方、持続感染しても何も症状の出ないキャリア(保菌者)も多く、日本国内には100万人
以上いると言われています。
このキャリアのうち、約10% から15%が慢性肝炎を発症し、その中から肝硬変、肝臓がんと
進行することがあります。
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◇B型肝炎の病原菌は?
B型肝炎ウイルス(HBV=Hepatitis B virus)が病原体です。遺伝子にDNAしか持たない
DNAウイルスの一種です。ウイルスの写真をご覧なりたい人はこちらから⇒HBVの写真
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◇B型肝炎の症状は?
実は私も10年ほど前に肝炎で入院した経験があります。私の場合はウイルス性の肝炎では
なかったのですが、それでも40日間も入院していました。
しかし、私にはこれといって自覚症状はありませんでした。しいて言うなら倦怠感、やたらと
疲れやすいと言うことでしょうか。
もともと肝臓は丈夫な臓器で、私たちは肝臓の持つ機能の20%ほどしか使っていないのだ
そうです。だから多少肝臓の細胞が破壊されてもこたえないのです。
肝臓が「もの言わぬ臓器」と言われるゆえんです。自覚症状が出た時は手遅れなどとも言われ
ますね。私も主治医に何回もそう言って脅かされました。
B型肝炎に感染すると、1ヶ月から3ヶ月の潜伏期間を経て、身体がすごくだるくなります。
疲労感を感じ、食欲不振、不眠症、微熱、下痢、吐き気、そ して黄疸(おうだん)と続きます。
黄疸が出るころには、尿が茶色っぽくなります。
以上が急性B型肝炎の場合です。急性の場合には何も症状が出ないまま、自然と治る場合も
あります。これが不顕性感染と呼ばれるケースです。
一方、持続感染して、何も自覚症状がないまま、慢性肝炎になることもあります。これを気付か
ずに放置しておくと、肝硬変から肝臓がんと進行することがあります。
「物言わぬ臓器」に対しては定期的な血液検査で異常がないか調べて大切にしてあげたい
ものです。
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◇B型肝炎の感染ルートは?
B型肝炎の感染ルートは、性行為感染、血液感染、母子感染の3つです。
●性行為感染
B型肝炎ウイルスは、精液、膣液、血液、唾液の中に含まれます。従って、冒頭にも書きました
が性行為によって感染する、性感染症の1つです。
あなたには何となく肝炎と性感染症が結び付かないイメージもあるかも知れません。
次の図1をご覧下さい。国立国際医療センター(ACC)で2002年9月17日から同年10月31日
の間に、HIV感染者が他にどんな性感染症に感染しているかを調べたものです。
(ただし、調査対象は男性の同性間性的接触感染者に限られる)
図1.HIV感染者の性感染症重複感染
調査対象が少し偏っていますが、それにしてもご覧の通り、HIV感染者にはB型肝炎の重複感染者
が非常に多いことが分かります。
しかも、HIVがキスによる感染がないのに 比べ、B型肝炎はキスでも感染の可能性があります。
唾液に含まれるウイルスの量がHIVに比べて多いのです。ペットボトルの回し飲み程度では感染
しませんが、ディープキスでは感染した事例が報告されています。
むろん、性行為感染の予防にはコンドームの使用が有効であることはHIVと同様です。
●母子感染
母親がB型肝炎に感染していて、治療も何もせずに出産すると、産まれた赤ちゃんは感染して
キャリアになる確率が高いのです。
ただし、事前に母親の感染が分かっていれば治療により赤ちゃんに感染することはほとんど
ありません。
●血液感染
昨年あたりからやっとB型肝炎訴訟も和解の方向で進んでいますが、かつては輸血で感染
する例が多くありました。
現在では検査体制が整っており、輸血で感染することはほとんどなくなりました。
(残念ながら、完全になくなった訳ではないそうです)
後は医療現場での針刺し事故などによる感染、ピアス、刺青などで使用器具の使いまわしに
よる感染があります。
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◇B型肝炎の検査方法は?
B型肝炎は血液検査によって感染が分かります。
スクリーニング検査として、HBs抗原検査、HBs抗体検査、HBc抗体検査が行われています。
また、HBVのDNA遺伝子を精度よく検出するNAT検査も導入されています。
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◇B型肝炎の治療方法は?
B型肝炎の治療は、薬物療法、安静療法、食事療法が3 つの柱です。
●薬物療法
抗ウイルス薬として、インターフェロンが使われます。
●安静療法
安静療法は、肝臓に十分な血液を送り込むため、横になってじっと安静にします。
私も医師にこれを再三指導されました。
●食事療法
食事療法とし ては、高エネルギー、高タンパク、高ビタミンが原則です。破壊された肝臓の
細胞再生、修復に必要な栄養を補給してやります。
こういった治療により、急性肝炎の場合には1ヶ月から2ヶ月程度で完治します。一度感染する
と約9割の人に終生免疫が出来ると言われています。
た だ、まれに急性肝炎が劇症化することがあり、急激に大量の肝細胞が破壊され、生命の危機
に陥ることがあります。
一方、持続感染者が慢性肝炎を発症した場合には、その病状により治療法が異なります。
症状にも書いたように、慢性肝炎が肝硬変、肝臓がんと進行する ケースがあるので要注意です。
自覚症状がないからといって、検査にひっかかったまま放置していると、気付いたときには取り返し
のつかないことになるかも知れません。定期健診を受け、医師の指示に従うことが大事です。
なお、B型肝炎にはワクチンがあります。治療目的ではなく、予防としてのワクチン接種は健康
保険が効かず、1回あたり1万円くらい費用がかかります。
これを初回、1ヶ月後、6ヶ月後の3回繰り返し接種します。
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◇あなたに注意して欲しいこと
とにかく、肝臓疾患の初期は自覚症状が出ません。倦怠感やだるさを感じるといっても、ある日
突然急激に疲れる訳ではないので、自覚症状として感じることはありません。
私も、後になって肝炎が回復して初めて、それまでがいかに疲れていたかを実感したくらいです。
徐々に進行する慢性疾患は自分ではなかなか気付かないものです。
それだけに、あなたはぜひ定期的に血液検査を受けて下さい。何度も書きましたが、自覚症状が
出てから慌てても手遅れ、後悔するかも知れませんよ。
*重複感染の多い3つの性感染症があなたの自宅で検査出来ます。
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