抗HIV薬とは、HIVが体内で増殖するのを阻害し、コピーを作らせない薬です。
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かつてHIV感染症は致死的疾患でした。HIVの感染は数年先の死を意味していたのです。しかし、1997年ごろから始まったART(anti-retroviral therapy)と呼ばれる抗HIV治療法によって、予後は劇的に改善されました。HIVによって低下した免疫力を回復できるようになったのです。
ARTによって、エイズ発症前のHIV感染者はエイズを防ぐことが出来るようになりました。またエイズ患者においても免疫力を回復し、エイズ指標疾患の治療が可能となりました。エイズ関連死は劇的に減ったのです。
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◇ARTとは?抗HIV薬とは?
ARTは別名カクテル療法とも呼ばれます。それは複数の薬を同時に使うからです。どうして複数の薬が必要かと言うと、1種類だけの薬だとすぐにHIVが薬に対して耐性を持ってしまうからです。つまり薬が効かなくなるのです。
そこでARTでは3種類の薬を同時に使用します。常時3種類の薬が血中に存在することによってHIVが耐性を持つことが出来ないようにしているのです。
その辺の専門的な理屈はよく分かりませんが、同時に3種類の薬全部に耐性を持つことはさすがのHIVにも無理なのでしょうね。
さて、現在抗HIV治療に使う薬として日本で認可されているのは5種類合計25銘柄の薬です。(2009年現在)それらの薬の使用目的は全て同じ、HIVの増殖を防ぐことです。
薬の投与によって直接HIVを破壊するのではなく、増殖を阻害して増えないようにしているのです。HIVは自分の力だけでは増殖することはできません。人間の免疫細胞に感染し、内部に入り込んでコピーを作ります。
そこで、抗HIV薬はHIVが免疫細胞に入れないようにしたり、内部でコピーを作る工程をじゃまして増殖できないようにするのです。
HIVが新しいコピーを作れないとどうなるか?段々と数が減っていきます。なぜなら免疫細胞に攻撃されて退治されたり、感染した細胞の寿命がくればその細胞といっしょに最後を迎えてしまうからです。つまり、HIVは死んでいく数以上に新しくコピーを作っていないと増殖できないのです。
では、5種類の抗HIV薬を詳しくみていきましょう。「抗HIV治療ガイドライン(2011年3月版)」を参考にしました。
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◇核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)
HIVが逆転写酵素でRNAからDNAを作ろうとするとき、この薬はDNAの中に組み込まれます。この余計なものが組み込まれたために、いわば HIVの純正DNAを作ることが出来なくなります。その結果、その後の増殖プロセスに進むことが出来なくなり、コピーが作れません。⇒『HIV増殖のメカニズム』
この薬が初めて抗HIV治療に使われた薬だそうです。名前に「核酸系」とあるのは、核酸の構成物質を使っているからです。
商品名 | 略称 | 承認時期 |
レトロビルカプセル | AZTまたはZDV | 1987年 |
ヴァイデックスECカプセル | ddI | 1992年 |
エピビル錠 | 3TC | 1997年 |
ゼリットカプセル | d4T | 1997年 |
コンビビル錠 | AZT+3TCまたはCBV | 1999年 |
ザイアジェン錠 | ABC | 1999年 |
ビリアード錠 | TDF | 2004年 |
エプジコム錠 | ABC+3TCまたはEPZ | 2005年 |
エムトリバカプセル | FTC | 2005年 |
ツルバダ錠 | TDF+FTCまたはTVD | 2005年 |
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◇非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)
こちらも阻害する方法が異なるだけで、目的はNRTIと同じです。この薬はHIVの逆転写酵素と結合し、逆転写酵素本来の役割である、RNAからDNAを作る機能を妨害するのです。
この薬は核酸を基本にしていないので、「非核酸系」と呼ばれています。
商品名 | 略称 | 承認時期 |
ビラミューン錠 | NVP | 1998年 |
ストックリン錠 | EFV | 1999年 |
レスクリプター錠 | DLV | 2000年 |
インテレンス錠 | ETR | 2009年 |
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◇プロアテーゼ阻害薬(PI)
HIVは宿主細胞のDNAを巧みに利用して自分のコピー部品をどんどん作らせ、それを宿主細胞内で組立てます。この薬は、その部品を作るプロセスを妨害し、部品を作らせないようにします。
当然ながら、HIVのコピーを組み立てる部品が全部揃わなければ、新しいHIVを組み立てることは出来ません。結果的に増殖を防止することが出来ます。
商品名 | 略称 | 承認時期 |
クリキシバンカプセル | IDV | 1997年 |
インビラーゼカプセル/錠 | SQV-HGC | 1997年 |
ビラセプト錠 | NFV | 1998年 |
ノービア錠/ソフトカプセル/リキッド | RTV | 1999年 |
カレトラ錠/リキッド | LPV/r | 2000年 |
レイアタッツカプセル | ATV | 2004年 |
レクシヴァ錠 | FPV | 2005年 |
プリジスタ錠(300mg) | DRV | 2007年 |
プリジスタナイーブ錠(400mg) | DRV | 2009年 |
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◇インテグラーゼ阻害薬(INSTI)
この薬は、HIV遺伝子の宿主遺伝子への「組み込み」を担う酵素インテグラーゼを阻害する薬です。結果的にHIVは自分のコピーを作ることができません。
商品名 | 略称 | 承認時期 |
アイセントレス錠 | RAL | 2008年 |
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◇侵入阻害薬
この薬はHIVがCD4陽性リンパ球に感染するとき、CCR5という受容体と結合するのを阻害します。結果的にHIVはCD4に感染することができず、自分のコピーを作れません。
商品名 | 略称 | 承認時期 |
シーエルセントリ錠 | MVC | 2009年 |
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◇HIV感染症は完治できないのか?
ここでご紹介した抗HIV薬によってHIVは増殖を阻害され、段々と数が減っていきます。それに伴って免疫細胞が増え、免疫力が回復します。
では、この薬を飲み続けることによってHIVを完全に排除することは可能でしょうか。実は単純計算ではHIVを完全に排除するためには74年以上かかるそうです。詳しくはこちら⇒『HIV感染症は何年で完治できる?』
残念ながら現在までのところ、HIV感染症を完治させるまでには至っていません。
ARTによって抗HIV治療の予後が劇的に改善されたとはいえ、早期発見、早期治療がより効果的なのは言うまでもありません。エイズ発症前にHIV感染が分かればエイズを防ぐことも可能になりました。
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